暁のかたる・しす

文筆家/編集者・中川大地のはてなダイアリー移行ブログです。

歩兵と将校の戦争 古山高麗雄と吉田満 担当:荻原魚雷

戦争という経験はあまりにも苛烈で巨大すぎ、そこに関わったひとりずつの人間は、結局のところ自分自身の立場と体験に認識を閉ざされざるをえない。とりわけ敗戦という結果がもたらした不自由と屈折が、立場の異なる戦争体験者相互の歩み寄りをなおさら困難にしたことこそが今にいたる戦後という時代の不幸であったのだけれども、そんな中で、「お互いに致命傷を与えかねない批判をくりひろげながら、より深く相手を受け入れようとする」二人の戦争文学者の姿を教えてくれるのが本稿。福井ーこうの、かわぐちー本宮と、各世代でも示唆した、戦争の見方の対照的な複眼セットのコアとして、意識したいもの。