暁のかたる・しす

文筆家/編集者・中川大地のはてなダイアリー移行ブログです。

【勝負仕事告知1】『思想地図 vol.4』に論文&中沢新一ガイド掲載!

ゼロ年代と呼ばれた2000年代も、あと1ヵ月というどん詰まり。いろいろととっちらかった回り道ばかりの10年間でしたが、ようやく滑り込みでセーフというべきか、物書きとして世間様にこれだけは問うておかなければという、自分の世界観の中核をまとめる仕事をさせていただくことができました。

11月28日ごろから店頭にならぶ『思想地図 vol.4/特集・想像力』にて、『「生命化するトランスモダン」への助走――「環境」と「生命」の思想戦史』と題した拙論が掲載されます。今年の夏、『機動戦士ガンダム』30周年記念+東京都の環境イベントとして実現したお台場1/1ガンダム立像が何を意味していたのかの評価を話のマクラに、大正生命主義以来の戦前からの思想史や、複雑系・情報生命論系の自然科学のパラダイム転換を追いながら、2010年代からの日本思想にいかに「生命」と「環境」に根ざした普遍の層を復権するための理論的枠組みを、脳生理学/情報環境学の研究者にして芸能山城組組頭でもある大橋力(山城祥二)らの研究に依拠して提示してみせるという、浅学非才を顧みないナントモ無謀な試みです…。

インターネット・アーキテクチャの浸透と島宇宙化が徹底したメディア・コンテンツの流通に彩られるグローバル資本主義万能の世にあっては、ほとんど「トンデモ疑似科学」「ニューエイジの亡霊」的な嫌疑を避けることはできない主題に取り組んだ、これまでの『思想地図』誌に掲載されたあらゆる論の中で、間違いなく最も異端に類するものでしょう(笑)。
はたしてそれが、皆さんの生活実感的なリアリティに即して、どれだけの説得力を持ちうることか。
その成否のほどを、ぜひ誌面にてご確認いただけましたら、幸いです。

NHKブックス別巻 思想地図 vol.4 特集・想像力

NHKブックス別巻 思想地図 vol.4 特集・想像力

それから、「特別掲載」扱いで本誌末尾に掲載される本稿とリンクして、本誌のいちばん冒頭に掲載される中沢新一氏のインタビューの付随企画「一〇年代に中沢新一を読むためのブックガイド」の原稿も書かせていただきました。
思想が根源的な想像力を模索するというよりも、いま・ここにある社会体制を不可避の前提としていかに現状への適応やメンテナンスを工夫するかという社会学的・心理学的知ばかりに流れていった90〜00年代にあって、ひとり中沢新一だけが人類学的・考古学的知を深化させていった過程を追いながら現代思想のメインストリームの文脈に再接続しつつ、それが来たるべき10年代の知的態度のベースとなるべき必然を論じています。
もちろん、その僕のアングルからの評価の仕方には少なからず不適切な面があろうことは承知ながら、例えば浅田彰氏などと純粋に著作の数だけを比べてみても、現役の思想家としてどちらが旺盛で同時代的な展開に満ちていたかは、言わずもがなだと思うんですよね。
そういう、むしろ80年代ニューアカの色眼鏡を引きずっている古い思想読者こそが見失いがちな事実性について、きわめて無作法な抉り出しを試みたりもしました。どうかご笑覧ください。


……ともあれ、各界を代表する新旧多士済々な論者が結集した今回の号で、ひとり無名の木っ端ライター風情が鼻息だけでデビューさせていただけたことには、本当に恐縮しきりです。
 ちなみに誌面に取りあげていただいた経緯としては、2年前の本誌創刊号の論文公募で、編集委員北田暁大さんの課題「日本社会論の新たなる可能性に向けて」で応募したアブストラクトが次点扱いだったことなのですが、そこからグズグズと1年半かけて新たな切り口からまとめ直したものを、むしろもう一人の編集委員である東浩紀さんの方にご評価いただき、この夏に4号向けのチャレンジ機会をたまわった、という流れでした。加えて言えば、中沢新一思想をここまで僕がフィーチャーすることになったきっかけも、最初の公募時の東さん・北田さんとのミーティング時のサジェスチョンからだったりします。

聞けば、東さんと北田さんの二人が編集委員を務めての第1期『思想地図』は、北田さんが編集される次のvol.5で終了とのことで、ぎりちょんで間に合って良かったです、ホント…。そうした歴史的な号に拾いあげていただけた、東さんと編集協力の宇野常寛さん、NHKブックス編集部の制作スタッフの皆様には、心からの感謝を申しあげるしだいです。

一方で、今回の2本の原稿では、いまどきの既存の「現代思想」にどこか飢餓感を抱いていた人々のニーズに対して、「こういう『思想』を待っていた…!」という将来への予感で応えさせていただけるのではないかという不遜な自負もまた、実は密かにあったりします。
今後、間違ってもトンデモやニューエイジに同一視されることのないようw、さらなる研鑽を積み重ねて引き出しを拡げ、真に普遍的な強度のある10年代の思想の構築に微力を尽くしていきたく思いますので、どうか宜しくお願いいたします…!