暁のかたる・しす

文筆家/編集者・中川大地のはてなダイアリー移行ブログです。

野明も遊馬も出てこない。けれども―――!?

キャラクターではなく「レイバー」というテクノロジーやマクロな社会背景に焦点を当てた本書は、たぶん物語の主人公である泉野明や篠原遊馬といった特車二課の隊員たちの名前が一度たりとも登場しない、初めての『パトレイバー』本だと思います(笑)。(そのかわり、帆場や柘植や内海といった敵役たちの存在感はやけに大きかったりする……かも)
だから、ロボットヒーローアクションというより、むしろ普通の若者たちが事件や人間関係や諸々の社会的現実に揉まれて成長していく職業ドラマとしての魅力を感じていた『パトレイバー』ファンの方々(僕自身がそうです…)には、いささか淋しく思われてしまうかもしれません。
ただ、彼らが物語の中で抱いたであろう思いや葛藤や背負っていたテーマ性は、一執筆者として可能なかぎり行間に込めてみたつもり。たとえば、「レイバー」という言霊に象徴される「労働のエートス」が、テクノロジーの進歩やレイバー事件の凶悪化を通じていかに変容していったか。そんな時代精神の描写は、無邪気なメカフェチ少女だった野明が、ゲーム感覚でレイバー犯罪を起こすバドのグリフォンとの戦いなどを通じて“立派な大人”になろうと願うようになる原作の物語性や価値対立を、別のかたちで表現したものでもあります。
設定解説だからといって、決して無味乾燥にしない。大きな歴史の流れや技術の進歩の底に、第2小隊の連中のような無名の生活者たちのドラマが息づく『パトレイバー』らしさが、少しでも感じられれば……。
そんな思いも込めて、作りました。『パトレイバー』に、いささかでも魅力を感じたことのある、すべての方にお薦めします…!!