マコロン2 セットリストと楽曲解説
5/3のマコロン2に来場くださった皆様、ありがとうございました。
当日、13:00〜と19:30〜の僕のセットリストです。
全体コンセプトは「“洋”の和着化、“和”の革奏」。
イベントタイトルのお菓子で会場にも置いていた「まころん」が、イタリアの西洋菓子マカロンを仙台の菓子屋さんが日本風にアレンジしたものであるように、遊佐の『檸檬』からモチーフを拡げていくかたちで様々なかたちでの舶来サウンドの日本化や、日本のルーツ音楽のポップアレンジのバラエティを追求してみました。
【前半戦 13:00〜14:00】
<昭和〜大正バーチャルノスタルジー>
・青空/遊佐未森
「檸檬色音茶房」のオープニングはやっぱりこれじゃないと!
・港が見える丘/平野愛子
闇市はびこる戦後混迷期に一条の光を差し入れた美しい名曲。NHK連続テレビ小説『てるてる家族』でも物語冒頭、次女の誕生エピソードで流れていた。
・白い色は恋人の色/RIKKI
元ちとせの先輩格にあたる奄美民謡ポップ歌手第一号のRIKKIによる、高度成長期ヒット歌謡のカバー。昨今の高度成長ノスタルジーの契機になった『クレヨンしんちゃん 嵐をよぶモーレツ!オトナ帝国』での原曲使用は涙ちょちょ切れ。
・ゴンドラの唄/遊佐未森
『檸檬』収録曲の中で、唯一の大正年代の曲。
・大道芸人/あがた森魚
遊佐の晴朗な大正浪漫受容の裏をなす、当時のエログロナンセンスな爛熟をフィーチャーしたあがたによる「人魚」の見世物の歌。
<春とお花のジャポニズム>
・春よ来い/はっぴいえんど
「日本語ロック論争」を展開した伝説のバンドのファーストアルバム第一曲。過剰にステロ化した日本風俗をザ・バンド風のロックサウンドに乗せたことから、「Jポップ」の歴史は始まった。
・春一番/芸能山城組
「歌謡曲」と「ポップス」の地位が入れ替わる70年代後半のヒットアイドル歌謡を、合唱界の異端児だった山城組がカバーするという異色曲。
・椎葉の春節/ZABADAK
熊本県椎葉村の民謡を、民謡くささを脱臭しアイリッシュな透き通った唱法でアレンジ。
・花の鳥/木下伸市
吉田兄弟や上妻宏光とならぶ津軽三味線ポップ化の第一人者による、曲名通り軽やかで華やかな楽曲。
・桜/遊佐未森
作風模索期のファースト盤『瞳水晶』だからこその、その後の遊佐にはあまりみられないジャパネスクな楽曲のひとつ。
・サクラ/上野洋子
ボイスパフォーマーとしての実験的作風が近年目立つ上野の、日本語オノマトペの面白さを追求した近作『自然現象』の構成曲。
・桜/ZABADAK
「椎葉の春節」とならび、収録アルバム『桜』の「ZABADAKとして、日本人として、更に人間としての本能へのリコール」という帯コピーの核をなすタイトルナンバーのインスト曲。ただ、いささかも「和」風の音のない曲を聴くかぎり、「日本人として」というのはあまり本気でないことがわかる(笑)。
・野の花/遊佐未森
前半締めは、最後のリフレイン旋律がとりわけ日本歌曲的な情感に満ちた『HOPE』の最終曲。が、CD盤面の傷でひどい音飛びのため演奏中止○| ̄|_ 情けなし……
【後半戦 19:30〜21:00】
<イントロ檸檬〜無邪気なる大陸浪漫>
・夜来香/遊佐未森
・夜来香(中国語)/李香蘭(山口淑子)
『檸檬』版と李香蘭の原曲を対比。理想化された西洋と日本的な情感の接合に注目した前半セットに対し、植民地主義を背景に大正〜戦前年代に憧れられていた大陸や南島のサウンドをフィーチャーする傾向になった後半セットのテーマ起点として。
<月と祭のポストコロニアリズム>
・月夜の浜辺/遊佐未森
中原中也の人気詩の朗読。ここから月シリーズはじめ。
・月ぬ美しゃ 〜 琉歌/Vita Nova
上野洋子が参加する古楽ポップユニットVita Novaによる琉球の八重山民謡アレンジ。「つきぬかいしゃ」と読みます。
・月の魂/菅野よう子
富野由悠季の「地球回帰」旋回が鮮明になった『∀ガンダム』サントラより、農耕民的な土俗性にぎこちなくも迫ったレット隊のテーマ曲。徐々にマツリモードへ。
・月の夜/夏川りみ
kiroroが石垣島出身の夏川に楽曲提供した、三線伴奏や囃子がリズミカルで聴きやすい楽しげな琉球ポップ。
・よろしくどうぞ/サディスティック・ミカ・バンド
太鼓とチャンチキかき鳴らし、ここから月縛りを離れて本格的にお祭り開始。アルバム『黒船』のブリッジ曲的なナンバーで、これまたやたら「日本」を意識した一連のロックムーブメントのひとつとして。
・金田/芸能山城組
バリ島の打楽器アンサンブル・ジェゴグの重低音と、青森ねぶた祭のラッセラ、ラッセラのかけ声を取り入れた掛け合い合唱で構成、ネオ東京の世紀末空間を祝祭として表現した『AKIRA』のメインテーマ曲。
・OMATSURI/新居昭乃
ほとんど和風モチーフのない新居だが、神社から神隠しされてしまう子供たちのあちらの世界の村祭りの伝奇的な異世界を表現。
<民謡コンテンポラリーの諸相>
・花ざんげ/遊佐未森
『瞳水晶』のもうひとつのジャパネスク曲。雅楽風の打ち込みサウンドで幽玄の頽廃美を甘く唄っているのがトリッキー。
・ふなまち唄 Part2/矢野顕子
77年のデビューアルバム『JAPANESE GIRL』収録の、青森ねぶた祭をモチーフにした、創作民謡的な楽曲。はっぴいえんど〜あがた森魚に連なる日本語ロック草創人脈の「土着」や「日本」への接近の極致。
・山城節“柳の雨” 〜唐人お吉小唄 (明烏篇) 入/芸能山城組
江戸の三味線俗曲をルーツにし、大正年代に西條八十らが詞をつけた「唐人お吉」の演目の、あまり唄われない方(明烏篇)の曲の合唱化の試み。収録アルバムの『やまと幻唱』にはプロデューサーの中村とうようがライナーで「日本的なるものを現代の感覚の中に見出し得た点では、近頃ウワサの矢野顕子などよりも遙かにスケール大きくレベル高いものになったと確信している」と記しており、前年発売の『JAPANESE GIRL』を思いきり意識しているのが興味深い。
・あわの唄/和完
PS用ゲームソフト『moon』のサントラに使われた、長唄奏者早乙女和完による独自のエレクトリック三味線曲。公式サイトの楽曲解説によると「繁栄を祈った古代日本の言霊 ムーウー アヤワー タカマナハラ(高天原) ヤーサーワー(弥栄)と唄い、古代日本の富士王朝都市で唄われた言霊から始まる。プレアデス星人の唄につながる」ってわけわからん!
・椎葉の春節(E-mix版)/上野洋子
ZABADAK時代のボーカル曲をリミックスした近作『E-mix』収録バージョン。声が綺麗すぎる上野の場合、基本的に日本民謡らしさから離れる方向しかないというのがわかるアレンジ。
・素敵だね/RIKKI
アジア風の世界観・死生観が秀逸だった『ファイナルファンタジーX』のテーマ曲。奄美民謡歌手としてのコクがうっすら残った唱法や演歌調の節回し、胡弓っぽい伴奏が醸し出す大陸風味など、異色でありながらゲーム主題歌として堂々と物語のメインテーマを張れてしまうあたり、結構すごい楽曲だと思う。
<エピロ檸檬〜哀愁の大陸浪漫>
・蘇州夜曲/遊佐未森
イントロの「夜来香」と対応させ、李香蘭もカバーした異国情緒あふれる昭和歌謡史屈指のバラードで締め。ありがとうございました。
<エクストラ・セット>
余った時間は、今回のコンセプト縛りではかけられなかったスタンダードな幻想浮遊系ナンバーを気の向くままに。大トリは前回同様ライブ盤『Breath』から。
・仔猫の心臓/新居昭乃
・すみれ(田舎の幸福)/遊佐未森
・Original Aim/鈴木祥子
・ガラスの森/ZABADAK
・花かんむり/Goddess in the Morning
・街角/遊佐未森
・懐かしい宇宙(うみ)/新居昭乃
・瞳水晶(Breath版)/遊佐未森
と、以上前後半(エクストラ以外)通じて実は遊佐以外では芸能山城組の曲が3曲と最多出だったりしますが、ご興味の向きは、今月20日の芸能山城組春祭(http://www.yamashirogumi.gr.jp/event/haru2006.html)にもぜひお越し下さい。中川にメールいただければ、メンバー手売り価格にてチケットご提供できますので…。