暁のかたる・しす

文筆家/編集者・中川大地のはてなダイアリー移行ブログです。

<5>2000年〜現在 市場の「動物化」と「決断」への誘惑の下で〜時代への適応と対峙〜

新居昭乃ら第2次の「幻想浮遊系」ポップの成立の背景にあるのは、『エヴァ』以降の深夜放送枠アニメの激増である。かつてはOVAやゲームなどのパッケージ作品内に限られていた歌声が、マニアックに多様化した深夜アニメのテーマ曲(新居の場合はとりわけエン…

<4>1995年〜1999年 デフレ不況と“自分”の逆襲〜「メンヘラー」的傾向とそれぞれの見出した「現実」〜

強固なイメージ喚起力をもつ声質や楽曲で「幻想浮遊系」という傾向性をJ-POPシーンの片隅に打ち立てたコア歌手たちは、しかし90年代が下るにつれてその音楽世界を「現実」化させていった。 90年代の後半といえば、『新世紀エヴァンゲリオン』がさまざまな要…

<3>1993年〜1996年 「93年体制」の到来〜自己完結的世界の拡散・離脱・ルーツ探索〜

「93年体制」というのは、やはり佐藤賢二が指摘した、ポストバブルの消費低迷で内に籠もって「癒し」を求めたりする辛気くさい風潮傾向のこと。先の見えない不景気に95年に立て続けに起きた阪神大震災とオウム真理教のテロが拍車をかけ、人々の世紀末的な閉…

<2>1990年〜1993年 「89年体制」というファンタジー〜カスタム幻想表現の爛熟〜

そうして到来した擬似社会派的な時代の雰囲気のことを、佐藤賢二は「89年体制」と呼んだ。それはまず冷戦体制に守られた欺瞞的な平和の元で未曾有の豊かさを、他を一切顧慮することなく享受することのできた80年代へのリバウンドとしての後ろめたさであり、…

<1>1986〜1990年 冷戦エアポケット下の様々なる意匠〜空想的な情景創作スタイルの模索と確立〜

1986年というタイミングは、70年代後半から顕著に始まった高度消費社会化・情報化の波がひと巡りし、少なくともある程度以上都市化された情報環境に暮らす人々のライフスタイルや価値観の順応がさしあたり完了していたおり。ユーミン、YMO、BOOWYといったリ…

<前史>1970年代後半〜1980年代前半 「虚構の時代」の予感〜“起源”としての谷山メルヘン・フォークとエキゾチック歌謡のヒット〜

「幻想浮遊系」というカテゴリーを日本のポピュラー・ミュージック史に仮構する場合、名実ともにその元祖といえる存在が谷山浩子である。政治の季節が終わり、オイルショックを経た安定成長下で高度消費社会が到来しつつあった1975年というデビュー時期は、…

評論「『幻想浮遊系』ポップの時代」全長版

23日のマコロン3(http://www.sengoku-kubo.com/cgi-bin/calendar/schedule.cgi?form=2&year=2006&mon=12&day=23)参考用に、『PLANETS 01』に寄稿した「幻想浮遊系」についてのテキストを再掲しときます。誌面掲載できなかった全長版です。「幻想浮遊系」…

いよいよ今週土曜です…!

22日の忘年会を含めて、千石空房(http://www.sengoku-kubo.com/)のクリスマスはイベント3連チャン! うひ〜、仕事なんかしてる暇ないなあ〜(笑)◆macoron3(マコロン3) 〜静かな鐘の音茶房〜 街中 輝く夜に包まれて さざめき始める、その前に。 懐か…

新タワー建設推進協議会主催シンポジウム

昨日は、区内企業・商工会・町会等からなる新タワー建設推進協議会主催の有識者シンポジウムに、「すみだタワー(仮)構想を考えてゆく住民の会」として出席。昨年来の活動でどうにか協議会内に入りこみ、住民向けの公開性の説明と議論の場をという我々の提…

きまっちまった…

昨年4月からこっち、地域文化への貢献という名の住民エゴで、どのみち建ってしまうことが不可避なのなら、高度成長・バブル的な伝統放棄と景観破壊の戦後日本の建築慣行への決別のシンボルとすべく、わが墨田に建つ新東京タワーを明治〜大正期の帝都のシン…

タイガー、タイガー、じれっタイガー!!

明日、千石空房で初の落語会を開催します! 不忍通沿いの居酒屋でばったりお会いした偶然で実現した、千石空房として地元の方々をターゲットにした初のイベント。各種イベントメニューも用意し、ぜひ成功させたく思いますんで、よろしければお運びください。…

明日開催! マコロンpresentsスペシャル茶房 at 千石空房

直前告知でゴメンナサイ! 去る5月3日に『macoron2(マコロン2) 〜遊佐未森 檸檬色音茶房〜』(http://d.hatena.ne.jp/qyl01021/20060419)を開催した「Artist Space 千石空房」(http://www.sengoku-kubo.com/)は現在、様々な手作り雑貨・アート作品…

『ゲド戦記』仕事、露出中!

それから、『サイゾー』6月号の「ニュースな人物」特集で宮崎吾朗監督に突撃取材をした縁から、29日から公開のジブリ映画『ゲド戦記』関連でライティングを3媒体ほどでさせていただきました。 最初が、現在発売中の『サイゾー』8月号掲載「押井守の二世対…

芸能山城組「第31回ケチャまつり」建て込み中!

で、『PLANETS』校正と『サイゾー』の原稿と並行して、今週は毎年恒例のケチャまつりを目下仕込み中…! いよいよ明日からです、ご縁とご都合の合う方はぜひお越し下さい!!http://www.yamashirogumi.gr.jp/event/cak2006/ ◆第31回 芸能山城組 ケチャまつり 〜…

惑星開発委員会『PLANETS Vol.2』校正中!

去年の冬コミではお蔵出し原稿1本の寄稿に留まっていた惑星開発委員会のミニコミ『PLANETS』でしたが、8月13日の夏コミ合わせ(西地区“ほ”12a)で刊行されるVol.2では脱稿ホヤホヤ(笑)の評論「昭和ノスタルジーブームの真相」や木皿泉さんインタビュー「…

マコロン2 セットリストと楽曲解説

5/3のマコロン2に来場くださった皆様、ありがとうございました。 当日、13:00〜と19:30〜の僕のセットリストです。 全体コンセプトは「“洋”の和着化、“和”の革奏」。 イベントタイトルのお菓子で会場にも置いていた「まころん」が、イタリアの西洋菓子マカ…

5月はイベント目白押し

気がついたら、5月の土日休日は主催・出演イベント予定でパッツンパッツン。はたして乗り切れるだろうか……。 ■5/3(祝) 昨年9月24日に行った遊佐未森を中心に「幻想浮遊系音楽」をかけまくるメロウでなだらかなラウンジイベントの第2弾を、いよいよ決行…

『サイゾー』5月号に勝負記事2本

昨年3月にmixiコミュで知って以来、「すみだタワー(仮)構想を考えてゆく住民の会」として有志の皆さんと一緒に先日墨田区が最終候補地に選ばれた新東京タワーの建設監視運動をしてきた中川ですが、月刊『サイゾー』5月号特集「テレビがツマらなくなった1…

惑星開発委員会『PLANETS Vol.1』に寄稿しました

最近、「週刊野ブタ。」がらみ等でツルむことになった合コンサークル惑星開発委員会さんが12/30冬コミ合わせで出す『PLANETS Vol.1』に、評論「『幻想浮遊系』ポップの時代 〜『虚構の時代』を彩った知られざるオタク系音楽の裏J-POP史〜」を書かせてもらい…

ドラマ版『火垂るの墓』を観た

清太と節子を追い出すオバさん側の立場から描くという、時代が一回転した00年代ならではの視点が注目だった11/1のドラマ版。土曜9時枠の『女王の教室』に『野ブタ。をプロデュース』といった今時リアリズムを踏まえたうえで前向きなメッセージ性を持たせた…

macoron、盛況のうちに終了!

念願にしていた遊佐未森メインのラウンジイベント「macoron〜夕涼み音茶会」での初DJ、誰よりもトチリながらなんとかしのいだ!……かな? 基本、アルバムしか持ってない、ライブも一度しか行ったことのないというぬるファンの僕ですが、拙いMCでごまかし…

【音楽イベント告知】macoron 〜遊佐未森 夕涼み音茶会〜

積年の念願だった、幻想浮遊系ポップのイベントをmixi有志の呼びかけでついに開催決定! 今回は、遊佐未森メインでいきます。 『macoron(マコロン) 〜遊佐未森 夕涼み音茶会〜』開催日時 :2005年09月24日(土曜日) 17:00〜23:00 開催場所 :高円寺 SALON by …

選挙、どうしよっかな

たまには政治の話。 いまのところ僕は郵政民営化、積極的に反対。 郵政民営化が官から民へ資金を動かし、財政再建に貢献するというのはこれまでの実績をみるかぎり、根拠のない宗教的信念にすぎない。国債の引き受け手をなくして日本がハイパーインフレに陥…

ウルトラマンは助けてくれない 「命(ぬち)ど宝」ーーウルトラマン脚本家・上原正三の見た戦争 担当:佐藤賢二(id:gaikichi)

そして本特集を締めくくる、存命の戦争体験者からの唯一の証言。「昭和20年で戦争が終わらなかった」沖縄から、現在につらなる体験として、そのリアリティを子供向け特撮番組に込めつづけた語り部の誠意を、『帰ってきたウルトラマン』ほかの上原作品の場面…

不関旗一旒 海軍二等兵曹 笠原和夫 担当:河田拓也(id:bakuhatugoro)

本特集のクライマックス、河田拓也の積年の思いが込められた圧巻の笠原評伝。『仁義なき戦い 広島死闘編』で北大路欣也演ずる山中が、戦後のすべての虚妄を撃ち抜くかのようにピストルを構えるモノクログラビアは、全体的におとなしめな誌面レイアウトの中で…

歩兵と将校の戦争 古山高麗雄と吉田満 担当:荻原魚雷

戦争という経験はあまりにも苛烈で巨大すぎ、そこに関わったひとりずつの人間は、結局のところ自分自身の立場と体験に認識を閉ざされざるをえない。とりわけ敗戦という結果がもたらした不自由と屈折が、立場の異なる戦争体験者相互の歩み寄りをなおさら困難…

岡本喜八と山田風太郎 交錯する巨視(マクロ)と微視(ミクロ)ーーニヒルな視点で戦争を見つめた昭和モダニストたち 担当:佐藤賢二(id:gaikichi)

バトンはここで初めて直接の戦中派へ。とかく平和の下での想像力が戦争を極端に悲劇的か英雄的かの大仰な物語としてのみとらえがちなところ、そこには生身の人間なればこその卑小で滑稽でさえある日常性が紛れこむ非「物語」的なありさまをクールに描いた、…

「戦争」を描いたビジュアル作品レビュー10 担当:佐藤賢二・河田拓也・奈落一騎・中川大地・久能五郎

福井・こうの登場の前提となる、代表的なビジュアル・エンタテインメントの来歴を通じて、戦後日本人の「戦争」イメージへのその影響や反映のありさまの変遷を辿る。取り扱い作品は『ゴジラ』『はだしのゲン』『総員玉砕せよ!』『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦…

2人の1968年生まれが語り継いだ「戦争体験」 『終戦のローレライ』と『夕凪の街 桜の国』 担当:中川大地

特集扉を挟んでの上述第一記事。「戦争を知らない子供たち」といわれた世代のそのまた子供にあたるいまどきの30代以下の世代が、戦後60周年という節目にあって、あの戦争をいかに自らの生の実質に繋がる普遍の物語として受けとめうるか。やがて戦争の直接体…

巻頭インタビュー:角川春樹「桜散り……、また桜咲く」 担当:奈落一騎

『男たちの大和』で角川映画の本格復活をはかる春樹氏のダイナミック・レンジを余すことなく拾い上げた、奈落一騎渾身のヒロイック・ダイアローグ。本特集に入る前に、脳天直撃の祭囃子が、読み手の人間観をバックリと拡げてくれます。