暁のかたる・しす

文筆家/編集者・中川大地のはてなダイアリー移行ブログです。

もうひとりの「森」ガール、夏みカンナ表紙のFinal Critical Ride

なんか一昨日は、1ヶ月も前にエントリした森ガールと幻想浮遊系の記事に急にブクマやトラバを沢山いただいてしまってビックリでした。滅多に更新しないこんな過疎ブログが何故!?ってのすら、慣れないものだからわかりゃしないし。
さすが森ガールパワーってところでしょうか?

さてさて、両本家(http://d.hatena.ne.jp/hazuma/20090805http://blog.goo.ne.jp/wakusei2nd/e/355cff0c1361862b12f89f5afb9db17b)にて既にアップ済みなので(おまけに両者なんかやくたいもないプロレスサービスまでしておりますが…)もう従前のお客さま方には先刻ご承知済みでございましょうが、それならばと調子に乗ってさらなる越境を試みるべく(?)、夏コミ新刊の告知です。
毎度毎度こちとらも「宇野常寛力の下部構造」を担わせていただいております(笑)第二次惑星開発委員会と、東浩紀さんの波状言論がついに本格タッグを組んで、評論界大盛り上がり中のw「平成仮面ライダー」シリーズの聖地巡礼対談を中心とした下記ミニコミを発売しますよ…!
なにせ表紙は、「夏みかん」こと森カンナさん。そう、何気にここにも「森」ガール発見! てわけで強引に、すべてを破壊し、すべてを繋いじまいます!!

波状言論+PLANETS 2009 SUMMER SPECIAL

Final Critical Ride [ファイナル・クリティカル・ライド]

責任編集/東浩紀+宇野常寛


コミックマーケット
2009年8月16日(日曜日)
東地区 "M" ブロック 23b 波状言論
東地区 "M" ブロック 22b 第二次惑星開発委員会


【インタビュー】森カンナ

【対談】東浩紀×宇野常寛 
聖地巡礼――平成仮面ライダーの軌跡
随行記 by 前田塁

【夏のスペシャクロスレビュー】 
1Q84/ヱヴァンゲリオン新劇場版・破/サマーウォーズ
前田塁荻上チキ+東浩紀宇野常寛

【対談】濱野智史×藤村龍至 
設計/デザインを考える

【インタビュー】宮台真司 
「日本」の難点、「思想」の難点

【論考】浅子佳英 
オペレーティングシステム的リアリズム ――『仮面ライダーディケイド』をめぐって 

【巻末対談】東浩紀×宇野常寛
批評とサブカルチャーの十年紀(ディケイド)

【付録CD】  
決断主義トークラジオAlive3
鈴木謙介+荻上チキ+濱野智史+東浩紀+宇野常寛

発行人:東浩紀宇野常寛
編集人:東浩紀宇野常寛
印刷:大日本印刷株式会社
企画・編集:波状言論+第二次惑星開発委員会
本誌デザイン:河口まどか/坂巻治子/まつおか
CDレーベルデザイン:梅沢和木黒瀬陽平
取材協力:中野慧
A5版:64頁/1,000円

不肖中川としては、東×宇野のメインコンテンツ「【対談】聖地巡礼――平成仮面ライダーの軌跡」の構成・ライディングと、『サイゾー』7月号の仕事としてやった宮台真司さんの『日本の難点』インタビューの全長完全版を提供させていただいています。

目次にない情報を補足すると、「ライダーの軌跡」の方は2部構成になっていて、Part1が聖地巡礼編である「平成ライダー ストレンジドライブ――全壊と全繋のロケーショナルロマン」。主に埼玉県各地にある「ライダー」ロケ地巡りに同行し、超ハイテンションな東さんと宇野くんの写真紀行をまとめさせてもらいました。
僕自身は「平成ライダー」シリーズは『ディケイド』の途中までしか観ていないので、終始テンション上がりっぱなしの30代批評家二人を一歩離れて微笑ましく見守ることしかできなかったものの(^_^;)、個人的には『PLANETS』本誌の巻頭連載「東京ストレンジウォーク」の番外編みたいなつもりで、それぞれの聖地が聖地たるゆえんに思いを馳せての体感をさりげなく込めてみた感じです。
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本誌の「ストレンジウォーク」の方が、主に隅田川にゆかりある土地巡りだったのに対し、今回はその隅田川が分かたれる分水嶺の岩淵水門から本流の荒川の流路を遡って北上するという旅路だったので、荒川放水路隅田川に東西を挟まれたコスモロジーの中で生まれ育ってきた墨田区民としては、別な意味でも「聖地巡礼」になっていて感慨でした。以前、連載第2回で、川には島宇宙島宇宙を隔てながらも意志さえあれば容易に渡っていける通路としてのコードを付与したりもしてたので、ああ、奇しくもまたテーマ的に通底してしまったな、って。


しかしそんな能書きはともかく、「ライダー」ロケハンチームの眼力にうならされる各地の素晴らしさに癒されまくりの1日でした。まさに森ガール垂涎のこんな風景にも出会えたりとかね。


で、Part2は対談編である「『平成ライダー』から考える」。ロケ地間を移動中の車内での5〜6時間にもおよぶ、素人介入不能の硬軟メタベタ入り混じったw濃密ライダートークの中から、ほぼ全部の批評的話題をいっそう濃縮還元しました。
ともあれ、この収録日には、アーキテクチャへの依存をかなぐり捨て身体感覚の部分で鋭い「人間」の力を発揮してくれた東さんや、社会の流動性に流されて固有性をなくしてしまった某スポットでの宇野くんのセンシティブな反応など、その言説からはとても意外に思えるであろう二人の姿に出会うことができて、いろいろな意味で収穫でした(^_^)。うっすらとですがそのへんは誌面にも反映させたつもりなので、ぜひ感じ取ってみてくださいませ。
僕らを乗せたライダーワゴンが辿り着いた、奇妙な旅の結末とは!?

あと、宮台さんインタビューの方は、あくまでベストセラー特集の枠内で一般層向けにまとめた「サイゾー」記事(http://www.cyzo.com/2009/06/post_2247.html)の方では大幅にカットせざるをえなかった、宮台読者的に濃い文脈に乗った部分や思想系のコアな話題など、埋もれさせるのが惜しかった部分がすべて復活、4倍くらいの分量でばっちり読めます! 「第三期」とも言われる宮台氏の最新のスタンスがくっきりと出た記録になっていると思いますので、こちらもご期待を。
はたして「ディケイド」的なミヤダイの戦略性とは、何物をも信じないがゆえのものなのか、それとも……!?

いずれ後世から振り返ると、「この日を境に、ニッポンの評論界は変わった」となる可能性もガチであるかもしれない、ゼロ年代最後の夏の記念碑を、君のてのひらにも是非!!

森ガールと幻想浮遊系〜「森ガール」の元祖は遊佐未森か!?

はずかしながら、先日はじめて、「森ガール」なるファッション・トライブの流行を教えてもらいました。

草食系でふわふわワンピでロハスで民族・北欧系入ってて乙女でガーリーでカフェでまったり好きで可愛い雑貨好きで、要は『ハチクロ』のはぐみみたいな不思議ちゃんイメージの「森にいそうな女の子」ってことだそうだから……

それ、まんま遊佐未森やんっ!

……と、6月27日に行った新アルバム『銀河手帖』発売記念の柿の木坂ライブの最前列席で、ご本人まで約10m程度の距離で至福のなかであられもなく踊り狂っては、「もうミモリンにインタビューできたら死んでもいい!」という気持ちを新たにしてきたばかりの変態キモ中年として、心がうずかないわけにはいかないのでした。

実際、「森ガール 遊佐未森」でぐぐってみれば、「遊佐未森ガール?」といったブログのコメントや、「私が想う森ガールmusic」といったページもヒットするので、たぶんガールとは呼べないであろう同士マダムやオッサン方も少しはいたもよう。

そう、森ガールの妖精さんたち。いいかい、キミたちがいるそこはッ、我々が20年前に通過した地点……なんじゃないかなっ……!?

などという、まったく自信も誇りも持てない身勝手な先行者意識が(つうか我々じゃねえだろ)、頭の中で「僕の森」とか「ガラスの森」のメロディーに乗ってぐるんぐるんぐるんぐるん巡ってもうどうにもとまらないこの2日間なのです。

いやまあ、なんというか、「アレ系とかコレ系に近くて隣接してるんだけど、でもそういう既存の括りじゃしっくりこない、でも確かにわたしたちが共有している、大好きな“ここいらへん”の固有なシュミのあり方を、どうにかしてスパーンと一言で言い表したいのッ!」という情熱の中から生まれたコトバの成り立ち具合が、つい「幻想浮遊系」(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%B8%C1%DB%C9%E2%CD%B7%B7%CF)なんて言挙げをしなければ済まなかった身からすると、なんだか他人事とは思えなくって、ってだけなんですケドね(^_^;)。

そしてあわよくば、森ガールのブームに乗って、その元祖がここにある!とかいうこじつけで、なんとか未森さんにアタックできる仕事ができないものか、なーんて私利私欲が汲めども尽きません。。。

てなわけで、森ガールと幻想浮遊系を繋げるその日まで、三度の飯も喉を通らないであろう僕は、さっそくブームの発信地で、36000人以上もの参加者が集まりつつ、今は荒し対応のために承認制非公開コミュになっているmixiの「*森ガール*」コミュに不審にも森ガールの皆さんとミモリンへの情熱を率直に伝えて、場違いな参加申請してしまいましたw

で、やっぱりあったMusicトピでリサーチリサーチリサーチ……。
すると、遊佐未森を挙げてるのは436件の書き込みのうち、わずか6件○| ̄|_ やはり世代的に仕方ないか………
対して、圧倒的に多いのが、安藤裕子の34件やcharaの32件で、次いでYUKI25件、クラムボン17件、salyu13件、カヒミ・カリィ12件、羊毛とおはな11件、湯川潮音10件とかが目に付いたところ。

まあこうしてみると、単に世代が違うということだけでなく、さすがファッションからのカテゴリーであるだけあって、オタク客層の多い幻想浮遊系に比べて、サブカル寄りの旧ネオアコ渋谷系からの系列に近いことがわかります。

これに00年代の同人音楽系の流れの入った「ファンタズマル」系(DJイベント「DEMP@HOLIC」http://ameblo.jp/dempaholic/や「ANSWER/リハビリ」でよくかかる、I'veやアリプロ平沢進片霧烈火等、アニメ・ゲーム系統のクラブ向き音楽)や、Perfume相対性理論といったテクノポップエレクトロニカ系を隣接ジャンルとしてマトリクス化すると……

              <森・ナチュラル志向>
                   │
                   │
       森ガール        │        幻想浮遊系
安藤裕子クラムボン湯川潮音等) │(遊佐未森ザバダック志方あきこ等)
                   │
                   │
<自意識・恋愛志向>─────────┼────────<無意識・無垢志向>
                   │
                   │
渋谷系残党〜Jテクノ/エレクトロニカ系│       ファンタズマ
  (くるりPerfume相対性理論等)│    (平沢進、I've、ALI PROJECT等)
                   │
                   │
             <都市・テクノロジー志向>

みたいな感じでしょうか。
かなーり、どうでもいいことに時間と頭、使ってしまった感じですが……。

とまれ、新たなカテゴリーの誕生が、世界の連関や他者との相同と相違の認識につながってくれるよう、祈りつつ。

【仕事告知】講談社BOX「パンドラ」vol.3に『ひぐらしのなく頃に』論

縁あって、現在発売中の講談社BOXマガジン「パンドラ」vol.3での『ひぐらしのなく頃に』小説版完結特集の評論執筆陣の一人として、「『ひぐらしのなく頃に』が到達したところ 〜「共同性」と「公共性」の相克の果てに〜」を書かせていただきました。

パンドラ Vol.3 (講談社BOX)

パンドラ Vol.3 (講談社BOX)

考えてみれば、自分が編集した本以外でまとまった評論を商業原稿で書いたって『エヴァンゲリオン・スタイル』以来だなあ……。気がついたら、干支が一巡りしちゃってら(笑)。ちとノンビリと、スローなリア充ライフに現を抜かしてきすぎたかも。。

ともあれ、今回は同誌の大幅リニューアル第1号ということで、誌面全体豪華ラインナップで相当ホットな作りになっているようで、そういう活きのいい現場で機会をもらえて光栄でした。(…といっても、現時点でまだ見本誌が到着しておらず、現物を見れていないのですが。。)以下、編集長のN崎さんがメルマガで配信されていた告知文も貼り付けておきましょう。僕も一読者として楽しみです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
【号外】『パンドラ Vol.3』いよいよ予定通り発売!!
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
ども! パンドラ二代目編集長のN崎です。前回、号外メルマガでお知らせします……
と言っておきながら、遅くなってすいません! 特に毎回なぜか私のメルマガを楽しみに
反応してくださっている皆さまには、申し訳ない気持ちでいっぱいです!!
という訳で、お待たせしてしまった分、今回のメルマガでは、コピペが一度では
出来ないくらい『パンドラ Vol.3』のコンテンツを一挙にご紹介したいと思います!
まず最初は『「ひぐらしのなく頃に」完結記念特集!』。
巻頭カラーで、ともひさん描き下ろしのイラストーリー『昭和五十八年夏、雛見沢村』。
そして特大ボリュームで贈るネタバレ注意の『竜騎士07 超ロング五万字インタビュー』。
歴代担当者にBTさんも集まって、かなり熱く語り合ってます! そして、いよいよ
今週末4月18日(土)より公開の映画『ひぐらしのなく頃に誓』監督・及川中監督の
本音インタビュー『“70年代の魂”は封印して』。また評論として、考察サイト「PARADOX」
代表のKEIYAさんが「境界」について、ゼロアカの「暴れ鹿」藤田直哉さんが「人格障害」、
気鋭のアニメ系ライター兼編集者の中川大地さんが「共同性」と「公共性」、
『空想東京百景』でおなじみの ゆずはらとしゆきさんが「全体小説」という、それぞれの
キーワードを通して熱い原稿を寄せてくれました! 今回の『ひぐらし』特集は、
キャラ紹介や名場面集といった記事よりさらに一歩踏み込んで、『ひぐらし』の本質に
迫れたのではないかと自信をもっておススメします!!
そして、いよいよ放映開始が7月に迫った『「化物語」アニメ化記念特集!』。
『アニメ監督 新房昭之を知る3つの手がかり』と題し、これまでの作品紹介、
西尾維新さんとの初対談、新進気鋭の評論家・黒瀬陽平さんによる評論『キャラクター
だけの世界 ―-美少女アニメとしての新房+シャフト作品』というアニメへの期待が
ビンビンに高まる充実の内容です。
もちろん西尾さんは、赤衣丸歩郎さんをイラストに迎えた連載セパタクロー小説
『蹴語 NO-SIDE』も、シオミヤイルカさんがコミック化する『零崎双識の人間試験』も
絶好調! 待望のアニメ放映へ向けて超テンション上がってます!!
3つ目は、『初披露! “脅威の新人”特集』。
5月に刊行される話題の超弩級型探偵小説『ファイナリスト/M』天原聖海さんの
前菜的小説『アンティパスト/L』。そして、初の流水大賞受賞となった『白の断章』
(『機械仕掛けの泡』改題)鏡征爾さんの書き下ろし小説『向日葵とRose-Noir』。
また、『マッドドリーム・アンド・マジカルワールド』の黒乃翔さんの新作書き下ろし
『ビデオ・デイドリーム・ガール』も掲載。特に、今回初めて皆さまの前に登場する
天原聖海さんと鏡征爾さんが持つ独特の“世界”の面白さにご注目ください!☆
そして、講談社BOXといえばイベント!
ニコニコ動画にて生中継された『東浩紀ゼロアカ道場 第5回関門』の画面には
映らなかった側面をライター・さやわかさんがレポート。そして道場主・東浩紀さんが、
いよいよ最終局面に向かう『ゼロアカ道場』の現在を総括した論考『批評から祭りへ、
そしてまた批評へ』。『ゼロアカ』という“試み”の功罪を含めた結果と可能性を冷静に
見つめながら、その上で前に進もうとする真摯で熱い原稿です!
また、『ゼロアカ道場』とは別に、講談社BOX発の新たなイベント企画も始動します。
その募集記事も掲載されますので、楽しみにしてください!!
また、今回初めて『パンドラ』に登場する方もご紹介します。
大久保町の決闘』などで知られる田中哲弥さんの書き下ろし不条理小説、
『サゴケヒ族民謡の主題による変奏曲』。タイトルからは何の小説かわかりませんが、
最初は爆笑しながら楽しく読み進めると……と、これ以上言うとネタバレになりそう
なので、続きは是非とも本編で!
さらに、『ゼロ年代の想像力』で批評界に旋風を巻き起こした宇野常寛さんも新連載批評
『ソフト・スターリニズムの映画/物語論』で登場! 記念すべき第1回は、全世界で
流通するブルーレイディスクの12.5%を占めると言われる映画『ダークナイト』。あの
映画の中で一体何が行なわれていたのか、世界で何が起きているのか、非常によくわかる
「映画/物語論」です!
ちなみに、純粋に初登場ではありませんが、『団地ともお』で大人気の小田扉さんも
描き下ろし大河マンガ『コーヒーをいれよう』を本格スタート! マスター・ワタナベと
犬のゆるくて心温まる交流が、前回より6倍増ページで味わえます!!
最後になりましたが、前号からの続編となる佐藤友哉さん『2345 [実戦版]』もさらに
物語の核心へと進みます! また、名匠・石田敦子さんの『姉さんゴーホーム〈後篇〉』は
今号で感動のエンディング! もちろん、その他の豪華連載陣も大充実!!
そんな『パンドラ Vol.3』の発売日は、4月20日(月)です! 
どうぞ楽しみにお待ちください!!

『ザ・レイバー・インダストリー 〜レイバー開発全史〜』目次

■Light and Shadow of LABOR INDUSTRY レイバー産業の光と影
 ●最新レイバー「篠原AV-02ヴァリアント」のすべて
 ●LABOR'S CASE FILE レイバー事件簿
 ・No.01 篠原製新OSウィルス混入事件
 ・No.02 東京テレポート事件
 ・No.03 黒いレイバー事件
 ・No.04 自衛隊試作レイバー暴走事件
 ・No.05 ソ連製レイバー強奪事件
 ・No.06 甲斐事件
■LABOR ENGINEERING レイバー工学
 ●レイバー開発秘話
 ●レイバー技術の進化と体系
 ●レイバーの基本構造
 ・01 動力系
 ・02 駆動系
 ・03 直立・歩行機構
 ・04 ハンドマニピュレーター/エンドエフェクター
 ・05 コクピット・操縦系
 ・06 オペレーティングシステム(OS)
 ○コラム「レイバーの兵装と特殊ユニット」
■LABOR Ctalogue Part.01 <民間・特殊作業レイバー編> 
 ●レイバー企業解説 (1)篠原重工
 ●レイバー企業解説 (2)菱井インダストリー
■LABOR ECONOMICS レイバー経済学
 ●「レイバー」という名の構造改革
 ●温暖化と震災が生んだ巨大計画「バビロン・プロジェクト」の真実
 ●業界最王手篠原重工の経営戦略
 ●レイバー産業のこれからと「取り戻された10年」の功罪
■LABOR Ctalogue Part.02 <警察・軍用レイバー編>
 ●レイバー企業解説(3)シャフト・エンタープライズ
 ●レイバー企業解説(4)淵山重工/(5)マナベ重工
 ●レイバー企業解説(6)菱川島造船/(7)エセキ農機
 ○コラム「レイバー産業が生んだ副次産業効果」 
■LABOR CRIMINOLOGY レイバー犯罪学
 ●警視庁特殊車輌二課 設立の真実
 ●特車二課の活動
 ●広がるレイバー犯罪の恐怖  
■LABOR MILTARY SUTUDIES レイバー軍事学
 ●兵器としてのレイバー その利点と問題点
 ●陸上自衛隊レイバー部隊の部隊編制と作戦運用
 ○コラム「幻のレイバー運用構想」
 ○コラム「TOKYO WAR」

野明も遊馬も出てこない。けれども―――!?

キャラクターではなく「レイバー」というテクノロジーやマクロな社会背景に焦点を当てた本書は、たぶん物語の主人公である泉野明や篠原遊馬といった特車二課の隊員たちの名前が一度たりとも登場しない、初めての『パトレイバー』本だと思います(笑)。(そのかわり、帆場や柘植や内海といった敵役たちの存在感はやけに大きかったりする……かも)
だから、ロボットヒーローアクションというより、むしろ普通の若者たちが事件や人間関係や諸々の社会的現実に揉まれて成長していく職業ドラマとしての魅力を感じていた『パトレイバー』ファンの方々(僕自身がそうです…)には、いささか淋しく思われてしまうかもしれません。
ただ、彼らが物語の中で抱いたであろう思いや葛藤や背負っていたテーマ性は、一執筆者として可能なかぎり行間に込めてみたつもり。たとえば、「レイバー」という言霊に象徴される「労働のエートス」が、テクノロジーの進歩やレイバー事件の凶悪化を通じていかに変容していったか。そんな時代精神の描写は、無邪気なメカフェチ少女だった野明が、ゲーム感覚でレイバー犯罪を起こすバドのグリフォンとの戦いなどを通じて“立派な大人”になろうと願うようになる原作の物語性や価値対立を、別のかたちで表現したものでもあります。
設定解説だからといって、決して無味乾燥にしない。大きな歴史の流れや技術の進歩の底に、第2小隊の連中のような無名の生活者たちのドラマが息づく『パトレイバー』らしさが、少しでも感じられれば……。
そんな思いも込めて、作りました。『パトレイバー』に、いささかでも魅力を感じたことのある、すべての方にお薦めします…!!

「失われた10年」ならぬ、バビロン・プロジェクトによって「取り戻された10年」としてのレイバー世界

てなわけで、林氏と永瀬氏という大先輩の虎の威を借りながら(笑)、不肖・中川も編集の一人として全体のディレクションに少なからず噛ませていただきました。
レイバー世界のリアルな考察本を作るということは、『パトレイバー』の物語設定に加え、「現実世界の歴史」という“もうひとつの原作”を読み解き、料理する作業でもあるという点が、他のSFロボットフィクションにない際立って大きな特徴でした。僕の方で特にこだわったのが、バビロン・プロジェクトをはじめとする巨大公共事業によって、現実の「失われた10年」とは真逆の「第二の高度経済成長期」のような経済情勢と社会世相が訪れているであろうという描像です。
バブル崩壊以降、財政政策も金融政策も効かない未曾有のデフレ不況に沈み、日本型経営システムの崩壊と優勝劣敗の格差社会化への不安にあえぐ私たちの現実からすれば、レイバー産業が成長して内需を牽引したもうひとつの90〜00年代は、いわば「取り戻された10年」とも呼ぶべき、“かくありたかった理想の日本経済史”にも見える。ネットやケータイがないかわりに、レイバー・テクノロジーが発達した社会は、もしかすると人々が『ALWAYS 三行目の夕日』に涙したような、昭和三〇年代主義的な「夢」や社会的共同性さえ、回復してくれるのかもしれない。だが、はたしてそれは本当にユートピアなのだろうか……?
そんな、アップトゥデートな現実社会の問題やその反動的願望に対する批評的思考実験として、『パトレイバー』の作品世界を読み解けることを示した点もまた、本書ならではのセールスポイントの一つとしてアピールしておきたいと思います。

豊富な描き下ろしリニューアル・イラストで彩る、パトレイバー版『ガンダム・センチュリー』!?

本誌は、学研ムック「歴史群像」シリーズのスピンアウトとして、フィクション世界の歴史をあたかも現実にあったのかのように考証する特別編集企画「アナザー・センチュリー・クロニクル」の第3弾にあたります。ちなみに第1・2弾は一昨年発売の『機動戦士ガンダム 一年戦争全史』。ガンダムの場合は、もともと作品世界が第二次世界大戦の欧州戦線をモデルにしている部分が大きいので、まんま「歴史群像」のセルフパロディといった趣向がピタリとはまったわけですが、レイバーの場合は現代日本の企業社会が舞台なので、さらに一味違ったスタイルのコンセプチュアル書籍になっています。ガンダム本で言えば、どちらかというと『アナハイム・ジャーナル』に近い体裁かもしれません。
ただ、アニメの設定画や場面写真を一切使わず、まるまる一冊分オリジナルの描き下ろしによる代表的なレイバーイラストでビジュアルを固め、作品内での描写から大幅に踏み込んだメカの科学技術考証や歴史経緯の設定創作を体系的に行った初の書籍という点では、むしろ『ガンダム・センチュリー』に似た位置づけをもった本だと言えるでしょう……!

とにかく、宇宙世紀と違って「90〜00年代の日本」という圧倒的なリアリティを背景に持つパトレイバー世界の場合、我々の生きている「いま・ここ」の時点でのテクノロジー水準でもって、全高7mほどの乗用作業ロボットが実現する機構を説明づけなくてはならない。のみならず、それが「製品」として社会の様々な場面に普及するための政治経済的・社会史的条件や、犯罪や軍事に利用・応用される場合の理路を、いかに作品世界と矛盾せず、現実の歴史との地続き感のあるものとして説明するか―――。

そんな難題に、『一年戦争全史』を手がけたSF・架空戦記作家の林譲治氏と、『ガンダム・センチュリー』の伝説を築いた科学技術研究家の永瀬唯氏をツートップ監修に迎えて挑んだ、渾身の一冊です!!